笹井喜貴さん(岡山東商業高等学校出身)

 皆さんこんにちは、経済学部3回生の笹井喜貴(浅野ゼミ)と申します。僕は昨年の8月から12月までの1タームの間、岡山大学の交換留学制度=EPOKを利用してアメリカのカリフォルニア州にあるサンノゼ州立大学(SJSU)に留学していました。そこで、岡山大学経済学部を受験しようと考えている高校生や海外留学に興味を持っている在学生に向けて、少しでも僕の経験が役に立てば良いなと思い、この学生の声を執筆させていただきます。

EPOKについて

 まず留学の内容について触れる前に、大学や交換留学のイメージが湧かないという高校生のみなさんに向けてEPOKについて詳しく述べておきたいと思います。EPOK(Exchange Program Okayama)とは、岡山大学が全学部の学生を対象に募集・実施する派遣先の授業料不徴収となる交換留学制度です。

 簡単に言うと岡山大学の交換留学制度のことで、この制度を利用して留学すると、岡山大学に学費を納めていれば派遣先の授業料を免除されるというものです。さらに詳しい情報は岡山大学グローバル・パートナーズのウェブサイト(http://www.okayama-u.ac.jp/user/ouic/japanese/courses/students_epok_jpn.html)を参照ください。

 この制度を利用することで、ほとんど渡航費と現地での生活費のみで北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアの14の国と地域にある44大学(平成30年春・秋学期留学の場合)に「交換留学生」として半年〜1年留学することが可能になります。

 また経済学部生の場合、EPOKで半年や1年留学しても、卒業に必要な単位数さえ取得しておけば4年で卒業することも可能です。さらに、留学先で取得した単位を「単位認定」として、岡山大学で取得したものとして認定されることがあるので、経済学部生のみなさんや経済学部への入学を希望する高校生のみなさんは是非積極的にEPOKの利用を考えてみてください。

 EPOKのほかにも語学研修やサマー・スプリングスクール(1週間〜)もあるので、興味のある方は一度上記のウェブサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。

留学スケジュールについて

 さて続いて、留学に対するイメージをさらに深めるために実際の僕の留学までのスケジュールを紹介していきます。

 まずEPOKには春留学(3月/4月出発)と秋留学(8月出発)の二種類があります。しかし平成30年度の場合、春は9校のみなのに対して秋は44校もあります。このため春出発では派遣国もアメリカオーストラリア、タイ、中国、韓国の5カ国のみで、さらに応募者も限られた枠に殺到するので、春留学を希望される場合は自分の行きたい国や大学をしっかりと考えた上で十分な対策が必要となります。

 僕の場合3年の秋に留学だったので、書類の応募締め切りが1月の初旬で面接審査(二次審査)が1月末でした。そのため1月までには、派遣に必要なTOEFL・IELTSといった英語能力テストのスコアやGPAなどの条件をクリアしておく必要があります。

 このスコアは派遣先ごとに異なり、TOEFLの場合、上は86から下は60までのばらつきがあります。当然要求スコアの低い大学には応募も集中するので注意が必要です。

 そのため、応募締め切りから逆算してTOEFLの応募や勉強のスケジューリングを考え、学部の授業やゼミ、サークルなどと並立させられるように時間を作っていくことが求められます。*TOEFLについては後ほど詳しく説明します。

 特に1,2年次での留学を考えている方は、大学生活に慣れない中で多くの授業をこなし、かつTOEFLのスコアで上回生と競う必要があるので、このスケジュール管理がより一層大切になります。

 実際に僕は1,2年からの留学を目指していましたが、スケジュール管理の甘さや勉強不足もあって2年生の1月に応募、3年生の8月からの留学になってしまいました。今後留学をされるみなさんには、そのようなことにならないようになるべく時間を見つけてコツコツと勉強されることを強くお勧めします。

TOEFL(トーフル)について

 EPOKを使って主に北米に留学する場合にこのTOEFLのスコアが必要になります。TOEFLはTOEIC(トーイック)と違って大学などで必要となる学術的な英語能力を測るテストです。

 EPOKの場合、TOEFLの中でもコンピュータを使って行われる「TOEFL iBT(Internet-based Test)」が条件と成っていることが多いです。その形式はリーディング/リスニング/スピーキング/ライティングの4つのセクションで各30点満点、合計120点満点のテストです。

 iBTの場合は、スピーキングも英検のように面接官に向かって話すのではなくヘッドセットのマイクに向かって話し、録音された音声が後日採点されるという形式で実施されます。そのため、スピーキングの練習だけではなく、その環境に慣れるという練習も重要になります。僕の場合、TOEFLの具体的な対策をせずに行った1度目の受験では40点台でした(SJSUの要求スコアは61)。

 岡山大学には一般教養科目の「上級英語」としてTOEFL/IELTS対策の授業もありますので、「上級」という文字に臆することなく1年の一学期からでも参加していただきたいです。僕が実際に受講したときには、先生が丁寧にわかりやすくテストの形式から申し込みの仕方、おすすめのテキスト、単語帳まで教えてくださったので是非受講してみてください。一人ではなくクラスのみんなと一緒に学べるので互いにモチベーションアップにもつながりますし、僕のように一人では時間を作って勉強するのが苦手だという方にもお勧めです。

 とはいえ1度の受験でスコアを達成しようというのは難しいですし、もし目標スコアに到達できなかったときのリスクが大きいので最低でも2回は受験してほしいです。ただし、TOEFLは受験料が$235(約2万5千円)と高額な上、会場も広島や大阪に行く必要があるため、余裕を持った受験申込と受験対策が必要です。

英語/留学内容について

 現在海外留学を考えているみなさん、その中でも特にアメリカへの留学を希望される方は、少なからずアメリカという国や海外に憧れや期待を持っていることと思います。僕もその一人でした。よく「留学に行けば自然と英語が身につく」や「アメリカは日本に比べていろんなことが進んでいる」といった話を聞きますが、実際にアメリカに留学してみてこれらの言葉のおよそ7割は間違いだと思いました。

 僕が留学から帰ってきて友達や家族にあったとき、必ず聞かれるのは「英語喋れるようになった?」と「アメリカ楽しかった?」です。この何気ない質問からも上記の2つの、留学に対するイメージやある種のステレオタイプが透けて見えます。そして、その質問に対しての僕の答えは「行く前よりは喋れるようになったかな」と「うーん、楽しいというより良い経験になったっていう感じ」です。

 というのも、まず英語から説明すると、半年や1年間留学した程度では決してペラペラにはなれません。僕の個人的な意見では、4,5年現地に暮らしてようやく不自由なく会話できてくるという感じだと思います。しかし、もちろん留学して、実際に英語しか通じない環境に身を置いて生活することで英語は確実に伸びます。

 特にスピーキングでは、日本の英語教育の制度上どうしても弱い部分なので初めはやはりかなり苦労しました。そうして毎日ネイティヴスピーカーと話しているうちに英語を話すコツのようなものを徐々に掴んできます。

 ところが留学先では授業に必死で、生活にも必死です。生まれ育った日本とは180度違う環境では、生活しているだけで知らず知らずのうちにかなりのストレスがかかります。そんな環境では机に向かって単語帳を開いて新たに語彙をインプットするのはとても大変です。なぜなら今まで培った能力をいかに活用するかということに精一杯だからです。

 実際に僕が日本から持参した単語帳を開いたのは授業が始まる前の2日間だけでした。一体何が言いたいのかというと、短期留学しても新たな英語はほとんど学べません。留学は英語が話せるようになる魔法ではないと痛感しました。

 しかしその一方で、今まで培ってきた英語、持ってはいたが活用の仕方がわからなかった英語が使えるようになります。このことによってスピーキングは格段に伸びました。数字で例えると、留学前には100あるうちのたった20しか使えなかったのが、留学を通して80まで「使える」ようになったというようなイメージです。単純に能力は4倍になったけど、本来の自分が持つキャパシティは変わっていないということです。それを伸ばすには地道に机に座ってインプットしていくしかないと思います。

 それに、日本の英語教育についてよく批判を耳にしますが、個人的にはそこまで悪くはないと思いました。というのも、確かに100あるうちの20しか使えない、使う練習をする機会が少ないというようにアウトプットは課題だと思いますが、インプットの視点から見るとかなり優秀だと感じました。実際に使う英語のうちほとんどの語彙は中学・高校レベルの単語でカバーできているし、文法なんかはヨーロッパや他のアジアの留学生より優秀なんじゃないかと感じるほどでした。

 続いて留学の内容についてですが、個人的な感想として、留学前に抱いていたような期待ほどの充実感はなかったと思います。交換留学なので現地の一般の学生に比べてかなり制限があったり、学部レベルの留学なのでそこまで高度なことはやらせてもらえなかったり、そもそもの教育の質が悪かったりと、行く前には知りえないような現状が多々あって、みなさんが頭に思い浮かべるような華々しいものではありませんでした。

 ただ、それでも良い経験だなと思えるような出来事もたくさんありましたし、想像とそのようなネガティヴな現状を実際に自分の目で見て確かめられたことは、一生の宝だと確信しています。もちろん留学に対して感じることは人それぞれだし、行く国や大学、学部、受けるクラス、ルームメイトなどによって全く感じ方も変わってきますので一概には言えませんが、少なくとも僕の経験上は、アメリカ留学は絵に書いたような高尚なものではありませんでした。

 もちろん、そういった現実を踏まえた上で自分のやりたいことを、海外でしか挑戦できないことを、自分の夢を叶えようとすることは大変素敵だと思いますし、留学経験者として応援しています。

 しかし実際のところは、そういった現実を確かめる術が少ないのでわかっていないという人も多いかと思います。ただ「英語が話せるようになりたい」とか「海外でしかできない高度な研究がしたい」とかを期待して行って、現実を見て後悔するというのは非常に残念なことです。

 そうならないためには実際に留学に行った人に聞くのが一番です。留学担当の教員や事務の人たちは表面的な情報は知っていても内情まではわかっていません。EPOKは交換留学なので、自分の行きたい国、大学に留学していた先輩が必ずいます。例えば留学相談室では、毎週月・火・木曜日17:00〜18:30に先輩が親身になって相談に乗ってくれます。留学に行く行かないに関わらず、興味が少しでもある人は雑談を楽しむ感覚で気軽に立ち寄りましょう。高校生でも歓迎してくれるはずです。


 

2015年度入学 岡山県立岡山東商業高等学校出身