青尾 謙

1.アジア各国における社会イノベーション拡大プロセス分析

Aoo (2019)では東アジア4か国で、社会課題に対処し、社会の変容をもたらす「社会イノベーション」の事例がどのように拡大していくか、またそのプロセスに政府・企業・市民社会の各セクターがどのように関与しているかを分析しました。7事例の分析により、「上から」「下から」双方の社会イノベーション事例が、地域レベルでの多セクターの「同盟」の成立・拡散、社会の危機的状況、あるいは新たな価値や理念の創出等の要因を通じて、社会全体に拡大していくことを明らかにしました。

図1: 社会イノベーション拡大プロセス分析(日本における公害)  出典: Aoo (2019) 

2.岡山県北の山村再調査

かつて1950年代に、岡山大学を中心とする調査団が入った県北の山村に再調査に入り、この70年間での地域の変化、現状と課題、更に今後こういった地域がどのように産業やコミュニティを維持・発展させていけるかを、地域の方々と一緒に考えています(公益財団法人橋本財団と岡山大学の共同事業)。その一環として、日本・台湾・タイにおける農民による組織とイノベーション、それに対する社会関係資本の役割の比較について、国際共著論文(Rado et al. 2021)にまとめました。

2: 調査に入っている岡山県北の山村風景

      撮影:青尾

3.瀬戸内サステナビリティ&ウェルビーイング研究

岡山大学とベネッセホールディングスとの共同研究(2020~2022年度まで予定)として、香川県直島等における、現代アートによる地域再生の試みを、多様な関係者による社会イノベーションのプロセスとして分析し、他地域に応用可能なモデル化を図るものです。あわせて、それによる地域住民のウェルビーイングへの影響も計測する予定です。

3: 直島における調査風景
   撮影:青尾