中村ゼミではまちづくりに関する事例研究や経済学に基づくモデル等を通じて、主に日本における都市問題や地域政策を勉強しています。「まちづくり」や「地域活性化」といった言葉は以前からよく聞かれており、その成功例はよく新聞やテレビなどで扱われています。しかし、まちは人口、産業、財政、環境、医療・福祉、観光・文化など考慮すべき様々な要因が絡み合って形成されているため、単なる方法論のみでは一筋縄ではいきません。
中村ゼミでは、先生が設計に大きく関わった「地域経済構造分析」や各種統計資料等に基づいて都市や地域を分析・事例研究することで、地域振興やその過程に対して、多方面から考える力を養い自分なりの意見を持てるようになることを目標にしています。
また、事例研究の中で、産業連関分析、回帰分析、多変量解析などの統計的分析手法も学びます。特に産業連関分析は、産業連関表を用いてその地域内の経済のつながりの把握や波及効果の導出のために必要不可欠であり、ゼミ生全員で習得を目指し勉強を重ねています。
ゼミの最も大きな特徴として、教室の外での活動の機会が多いことが挙げられます。昨年は倉敷市商工課と共同で倉敷駅前の商店街における回遊調査を行いました。ただ調査するだけではなく、調査項目の設定・調査後の集計もゼミ生全員で議論を重ねながら行いました。また、来る11月16日には学内で地域経済分析システム(RESAS)講座が開催され、中村ゼミが分析事例報告をする予定です。
ゼミは3学年合同で月曜4、5限の2コマ連続で行っています。ゼミの進行は基本的に各人による報告の形式ですが、過去には3チームに分かれてグループ研究をしたこともあります。
地域経済に関係するレポートや書籍を各自で選び、データや事例を補強した上で各回2~3人が報告します。ゼミでは全員で議論を交わしながら理解を深めていきます。昨年度からは先生の著書「まちづくり構造改革(日本加除出版)」の輪読も度々行っています。
報告者は報告の前週までに資料を作成し全員に送ります。そして、ゼミ生全員が送られた資料に対して不明な点・加筆すべきデータや情報などのコメントを報告者に送ります。それを元に資料をブラッシュアップしてゼミに臨みます。この一連の流れは中村ゼミならではのもので割としんどいときもありますが、各人の参加意識を高め、
自分なりに報告内容について理解したり、さまざまな視点から地域経済の姿を考察したりすることにつながっています。
また12月以降はゼミの時間に4回生の卒業論文指導の時間がとられます。中村ゼミでは毎年4回生のほぼ全員が卒業論文を書くことにしています。2,3回生の時点で先輩の卒業論文作成の過程に触れることで、事例研究や分析に必要な問題意識を早期に持つことができます。その証拠に経済学部での経済学会懸賞論文制度において、中村ゼミからは毎年入選者を輩出し続けています。
ゼミの雰囲気もとても和やかで、先輩・後輩同士の仲がよいだけでなく、中村先生も多忙の中でも積極的に指導されます。ゼミ内での一人一人の熱心な取り組みがゼミ全体に大きな波及効果をもたらしています。
毎年1回夏休みにゼミ旅行をしています。今年は国際観光都市として名高い岐阜県高山市に2泊3日の日程で訪れました。現地では、ただ観光客としてお金を落とすだけではなく、事前に全員で予習を行った上で市役所の方やまちづくりに携わる団体の方へのヒアリングも行いました。
直接現地に出向き担当者の方の意欲的なお話をお聞きすることで、座学やWeb上の情報だけでは学べない多くの見識を得ることができているように感じます。このような経験もあり、中村ゼミでは大学卒業後の進路として国家または地方公務員を志望する人が多い傾向があります。
さらに、ゼミをきっかけとして実際に地域で活動するゼミ生が多いです。学内の地域総合研究センターを介してボランティアやワークショップに参加したり、中には地域活性化や岡山の魅力の発信などを目的とした学生団体の立ち上げや運営に携わったりする人もいます。それぞれがゼミを通して得る地域に対する問題意識を持ちながら、積極的に様々な地域に飛び込んでいくことで、社会とのつながりを意識すると同時に自分自身の成長にもつながっています。
総務省統計局のホームページには「地域の産業・雇用創造チャート」という地方創生において全国の地方自治体で使用されているデータと解説があります。そのページには中村先生によるYoutubeでの講義動画が掲載されています。このゼミ紹介ページがきっかけで、中村ゼミの活動内容や地域経済に関心を持った皆さんにぜひご覧いただきたいです。
総務省統計局「地域の産業・雇用創造チャート-統計で見る稼ぐ力と雇用力-」
井上慎喜(岡山県立倉敷青陵高校出身、2012年入学)