正しく為替予測をする際に知っておくべきこととは?

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為替は「金利・自国の景気・国際収支・紛争・物価・政治」など様々な要因により変動します。
外国為替証拠金取引や、株式取引などの投資を行っている人にとって為替相場を予想することは非常に重要でしょう。

そこで有限会社グリーンアースが「正しく為替相場の予測をする際に知っておくべきこと」を
計量ファイナンスや国際金融の研究をしている岡山大学経済学部の酒本隆太准教授に取材しました。

酒本隆太准教授
取材にご協力頂いた方

岡山大学/経済学部
酒本隆太准教授
略歴
慶應義塾大学商学部卒業、英国ヘリオット・ワット大学大学院博士課程修了(PhD)。大和住銀投信投資顧問株式会社(現 三井住友DSアセットマネジメント株式会社)、ワイジェイFX株式会社(現 外貨ex byGMO株式会社)を経て、2020年4月に岡山大学大学院社会文化科学研究科の准教授に就任。専門分野は国際金融や計量ファイナンス。主要論文に”The Time-Varying Risk Price of Currency Portfolios” Journal of International Money and Finance,  124, 2022年(共著)などがある。
個人サイト
https://sites.google.com/site/rsakemotohomepage/reserach

為替予測をする際に考慮すべきデータは何か?

「酒本隆太准教授による解説」

よく使われるものとしては各国の金利、過去の価格の値動き、各国の株価やコモディティ価格、物価上昇率、経済成長率、財政状況などが挙げられます。
金利、過去の値動き、株価、コモディティ価格の方が短期的な予測に関係して、物価上昇率や経済成長率がより長期的な予測に有効です。

また各国の金融政策のスタンスに注目することも重要です。短期的には金融引き締めを行う国の通貨は増価しやすい傾向があります。

酒本准教授が為替予測をする際の具体的な流れは?

「酒本隆太准教授による解説」
まずどの程度、先の予測をしたいかを明確にします。短期的(数日から1ヶ月)な変動ですと各国の金融政策のスタンスから金利差が拡大しそうなのか、
縮小しそうなのか
を考えます。同時に株式市場を含む、金融市場の状況からリスクが高い状況なのか、そうでないかを判断します。

金融市場のリスクが高い状況では、低金利であったとしても信用度の高い国の通貨は増価しやすいです。
より長期的(数年)ですと購買力平価を基にした理論価格から現在の価格は割安なのか、割高なのかを判断します。

立てた予測に対して、どのような取引スタイルを取ればリスクを減らせるのでしょうか?

「酒本隆太准教授による解説」

分散投資が重要です。特定の通貨ペアだけを投資すると予想が外れた場合の影響が大きくなります。
加えて特定の情報だけに基づいた取引を避けることが重要だと考えます。

例えば高金利国の通貨を買って、低金利国の通貨を売るキャリー戦略は人気のある取引スタイルですが、過去の金融危機の時には、
キャリー戦略の損失が拡大しました。私の研究では購買力平価から見て割安な通貨を買うバリュー戦略が過去の金融危機の際には有効でした。

以上のように取引戦略の分散も考慮するとダウンサイドリスクを減らすことができます。

効率的市場仮説を加味したら、勝てるはずがないという声も上がっていますが、これについてどうお考えでしょうか?

「酒本隆太准教授による解説」

私は市場にはリスクプレミアムが存在するという立場を取っています。
あるリスクを取ることによって、平均的な収益率をプラスにすることができるという考え方です。

例えばキャリー戦略の収益率がプラスの理由として、景気が悪いとき(投資の収益率がプラスであってほしい時)に
収益率が大きくマイナスになりがちな戦略なので、その埋め合わせとして、平均的な収益率はプラスになると考えられています。

これから金融に強くなっていくには、どういった勉強方法を取っていくべきでしょうか?

「酒本隆太准教授による解説」

まず金融、国際金融の学術的な知識と投資に関する知識をバランスよく学ぶことが重要です。
加えて日々の金融市場のニュースをチェックして、現在、市場で注目されていることは何なのかを把握することも必要です。

また市場の状況によっては過去に言われていたことが当てはまらない局面も出てきますので、予測が外れた場合はその理由を考えてみることも重要です。