釣 雅雄

経済学とデジタル化,データ分析

私は,個人の研究というより経済学研究を,主に高校生の皆さん向けに紹介したいと思います。

経済学部と経営学部(あるいは商学部)が分かれていますが,岡山大学経済学部はどちらの分野も学べる学部です。会計分野も含まれます。私はそのうち経済学分野で,日本経済や経済政策分野を担当しています。

経済学の中には,様々な分野があります。ただ,分析手法は共通化されています。そのため,教員はそれぞれ専門があっても,基礎的分野(すなわち分析手法を学ぶ分野)の学部授業を担当できる程度の知識は持っています。教員は,経済学部の理論や統計分析手法を用いて,専門分野の分析を行うイメージです。(ただ,制度,地域,歴史分析は専門外だとなかなかわかりません。)

さて,基礎分析では数学や統計を用います。”データサイエンティスト(Data scientist)”という言葉をよく聞くようになりました。それに似て,経済学の手法を用いてデータ分析する人のことを”エコノメトリシャン(Econometrician)”と言います。計量経済学を英語でEconometricsというので,そこからきた言葉です。何が違うか考えてみると,経済学理論,すなわち因果関係を踏まえた分析を行うのがエコノメトリシャンかなと思います。

AIのディープランキングのような分析は,大量のデータが必要です。これまで経済学では,それよりもずっと少ないデータで分析してきました。経済学では,単にデータ分析するだけではなく,経済理論などで理由も考えながら分析する特徴があります。経営学でも同じかもしれません。経営判断も,まだAIで簡単にするという段階にはないように思います。

とはいえ,デジタル化の中で,経済学を学ぶのにデータ分析がとても重要になっています。大学ではオンライン授業が急に導入されました。実は,授業だけではなく,データ分析でもネットが重要な基盤になっています。私が大学院に入った頃は,大学で共同利用するような高価なシステムを除き,個人レベルでは統計書を購入して自分でPCに打ち込むか,CDでデータを購入するというのが一般的でした。それでも統計は高額でした。今では,それが簡単に安価に(多くは無料で)入手でき,かつ,すぐに更新できます。

少し紹介しましょう。日本の統計を扱う政府部門として,総務省統計局があります。そこでは,API(Application Programming Interface)で,データベースからウェブを通じてデータを取得できる仕組みがあります。それはやや手間がかかりますが,同サイトのダッシュボード(https://dashboard.e-stat.go.jp/)だと簡単に利用できます。

他方,Googleにスプレッドシート(https://docs.google.com/spreadsheets/)という表計算アプリ機能があります。大抵の人とはGoogleアカウントがあるかと思うので,そのスプレッドシートで,1つのセルに以下をコピペしてみてください。すると,2020年1月以降最新までの完全失業率(季節調整済)が自動取得されて,表示されるはずです。ここで,0301010000020020010がデータコードですので,この部分(及びそれ以下の設定)を変えると他の統計も取得できます。

=QUERY(IMPORTDATA(“https://dashboard.e-stat.go.jp/api/1.0/Csv/getData?Lang=JP&IndicatorCode=0301010000020020010&Cycle=1&RegionalRank=2&IsSeasonalAdjustment=2&TimeFrom=20200100″),”SELECT Col5,Col10 LABEL Col10 ‘完全失業率(季節調整)'”)

この仕組みを使って,1995年以降の失業率と,景気の状況を示す景気動向指数の関係を示してみました。景気が良いときは(横軸で数値が大きいほど景気が良い。縦軸が失業率),失業率が低めになっています。あまり強い関係は出ていませんが,失業率は景気変動に対してやや遅れて反応するからです。月のデータですが,期間をずらしてグラフにすると,もう少し強い関係が出ると思います。

私がしたことは上記のコマンドを2つと,そのデータからのグラフ作成を1回したのみです。皆さんがここを読む時点にどうなっているかわかりませんが(時間が経っていれば消えてしまってるかも),データは自動取得されています。

経済分析は簡単にかつ正確にできるようになってきました。しかしながら,そうだからこそ,ますます理屈も必要になっています。データ分析をもとにして判断するというのは,社会に出てからも必須の技術になりました。経済学部での学習は,きっと将来の役に立つと思います。

経済学部教授 釣 雅雄