2014年度「隣人を知ろう」短期留学プログラム(中国)の報告会が開催されました

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10月15日に、「隣人を知ろう」短期留学プログラム(中国)に参加した学生・引率職員による帰国報告会が開催されました。

まず、経済学部の平野正樹副学部長が冒頭の挨拶を行い、本学部で国際交流への取り組みや海外留学の意義などを述べました。

次に、10名の中国派遣学生と引率職員の矢野さんが中国の中央財経大学での授業、中韓学生との交流、北京現地の様子などを紹介し、各自の体験や感想などを報告しました。派遣学生の報告からは、短期ながら言語や異文化の壁を乗り越えた結果、知識教養だけでなく、国際的視野を広げ、将来についても自信を深めたことが伝わってきました。

最後に、挨拶に立った松本俊郎学部長が今回の短期留学の経験が今後中長期留学へのきっかけになればと期待感を示しました。

経済学部では、海外留学を志す学生の支援を今後も積極的に行っていきます。来年度は、本学部と中国の中央財経大学は韓国の江原大学校へそれぞれ学生を派遣し、そこで日中韓の学生交流を行う予定です。

夏期短期留学体験者のコメント

渡邊 美彩・2年 「日中韓の関係に対する自分なりの考え方も変わった」

 私がこのプログラムに参加するにあたって,著しく成長してきた中国の現状を自分の目で見てみたいという動機のもと,この研修に臨んだ。理由として私は現在,大学のゼミにおいて中国経済について学んでおり,中国の発展に関してよい見方をしている教科書もあれば,悲観的な見方をしているものもあり,これらはすべて日本人から見た見方であって,現地の人から見た中国や彼らの考えを知りたいと思っていたためだ。そしてこの7泊8日の研修を通して,そのようなことが知れただけではなく,中国人や韓国人の学生やボランティアの方との交流をすることで,経済面だけではなくそのほか多くのことを学ぶことができた。以下に,それらのいくつかを述べたい。

 まず,2日目に中央財経大学(中国)の先生の授業を受ける機会があった。講義の中で先生に質問をする機会があり,中国の今後の成長について伺ったところ,「今後20年は成長の余地があるものの,その後は所得や購買力,余剰労働力などの問題の改善次第で変わってくるだろう」とのことだった。現地の中国人の中でも様々な意見があるため,この意見だけを鵜呑みにしてはいけないが,とても貴重な意見なので,これから参考にしていきたい。

 次に,このプログラムを通して北京の様々な場所を訪問した。訪れた場所だけでなく,北京市内を歩いたり,バスや地下鉄に乗ったりすることで北京の現状を見ることができた。町の中には高層ビルが立ち並び,私たちが訪れた観光地や有名なショッピングモールでは,きれいな服を着てブランド品のバッグや靴を履いている人を多く見かけた。その一方で,道を歩いていると古い民家があり,道端でぼろぼろの服を着て水や野菜を売っている人がいて,その中には子供の姿さえあった。私の中では,中国の格差は農村と都市の間の水平格差のイメージが強かったのだが,北京を訪れたことで,北京という一つの都市の中での垂直格差も見ることができた。そのほかにも交通における安全面や,空気の汚染などの環境面でもまだ発展途上国と思える部分が多々あった。北京という一つの都市を見るだけで中国全体を見ることはできないが,このような中国の現状を自分の目で確かめることができ,とても貴重な体験になったと思う。

 最後に,今回のプログラムでは中国の学生やボランティアの方だけでなく,韓国の学生とも交流することができた。最初は中国と韓国の学生の高い英語力に引け目を感じていたが,彼らはそのような私たちに積極的に会話を持ち掛けてくれ,英語力は劣るものの,最終的に普通に会話ができるようになった。会話の中で,日中韓の関係について話をする機会もあったのだが,彼らは私たちが思うほど日本について悲観的な考えは持っていなかった。しかし,韓国人の学生に日本についてどう思うか聞いたところ,「日本人は好きだが,日本の政府は嫌い」と言っていた。現在の日本について悲観的な考え方は持っていないが,領土問や歴史認識などにおいては、やはり違った意見を持っているようにも思えた。しかし,歴史認識について現状を変えていかなければならないと考えている学生もいたようであり,各国が歴史事実を認めたうえで,理解を深めていかなければならないのだと感じた。このような学生との交流はとても貴重な機会であり,もっと多くの学生の意見も聞いてみたかったと日本に帰った今では少し後悔もある。

 今回のプログラムでは,もともと自分が思っていたこと以上に多くのことを学ぶことができた。日本ではできない多くの体験をすることができ,日中韓の関係に対する自分なりの考え方も変わった。これら貴重な体験を今後に生かしていきたい。自分の価値観を変え,英語力を向上させるためにも,このような機会があればまたぜひ参加したいと思う。そして、もっと多くの学生が海外を訪れ,海外の学生と交流する機会を持つべきだと感じた。

内海 航・1年  「短期留学プログラムを通して学んだ3つのこと」

 今回の短期留学プログラム(中国)では,本当に多くの貴重な体験をすることができた。ここでは,プログラムを通して学ぶことができたことのうち,3つのことについて書きたいと思う。

 1つ目は,北京を肌で感じることが出来たことだ。3日目から7日目まで北京の観光地をたくさん見学することができ,楽しい思い出がたくさんできた。日中の北京は観光客で賑わう本当に楽しい場所で,研修に来ているということを忘れそうになるほどだった。しかし,4日目の夜,私のそれまでの北京に対するイメージは一変した。それは,ショッピングを終えてお店の前で集まっていたときのことだった。子連れのおばさんが中国語で何かを私たちに話しかけてきた。言葉は分からなかったが物乞いをされていることは分かった。そのときは中国の学生ボランティアの方が対応してくれたから良かったが,もし一人で北京に来ていたら私はお金を渡していたかもしれない。それほど同情しそうになったのだ。そのあとすぐ,学生ボランティアの方に「さっきの人は何と言っていたのか」と尋ねてみた。やはり,物乞いしていたのだった。彼は続けて「中国で物乞いをする人のすべてが本当に生活に困っているというわけではない。働く力があるにも関わらず,お金をもらい,そのお金で夜は豪華な食事をしたり,高級なホテルに泊まったりしている」と言った。この体験を通して私は北京の別の一面を知ることが出来た気がした。昨今の経済発展の影には,その発展に取り残されて貧しい生活をしいられている人もいるが,それを利用しようとする人も出てきているのだと感じた。

 2つ目は,中国と韓国学生の生の声を聞けたことだ。観光をする中で中国と韓国の学生と話しをする機会がたくさんあった。ある日,私は中国と韓国の学生に「二人は日中韓の関係についてどう思うか」と質問をしてみた。中国の学生は,「確かに三ケ国の間には歴史的にも深い関わりがある。そして今,歴史観の違いで問題が起こっている。しかし,歴史というのは度々変えられる。だから私は歴史を信じない。大切なのは前を見ることだ。これから三ヶ国が前を向いて交流していくことが大事だ。」と答えた。そして韓国の学生は,「国家間の交流は首脳クラスの対談よりも私たち国民同士の積極的な交流の方がずっと重要だ。」と答えた。私はこのとき,本当に研修に来てよかったと思った。日本の中にいたままでは,中国,韓国の人がこのような考えをもっているなんて想像もつかなかっただろう。日本のメディアは,韓国は反日教育を行っているということしか報道しない。それだけではまるで韓国人が日本人に対して悪いイメージしかもっていないようだ。それは中国に関しても言える。私たち日本人は自分の目で見てみようともせずにメディアの報道をすべてだと勘違いしてしまっているのではないだろうか。

 最後は自分の語学力の低さを痛感することが出来たことだ。韓国の学生との語学力の差は二日目の講義のときに浮き彫りになった。韓国の学生たちは教授の質問に対して自分の留学経験も交えて英語で意見を述べていた。それに比べて私は,自分の言いたいことを英語でどう言おうかと考えているうちに,どんどん話の流れが変わり発言することすら出来なかった。本当に悔しかった。この日,発言することが出来た日本人学生は一人もいなかった。このような経験も研修に来なければ絶対に出来なかったことだと思う。大学4年間をいたずらに過ごしてしまっては,間違いなく中韓の学生に,取り戻せないほどの遅れをとって社会に出ることになると痛いほど感じた。

 以上のことが今回の短期留学プログラムを通して経験出来たことの中でも特に記憶に刻み付けられた出来事だ。研修を終えた今は,このような貴重な研修の機会を与えて下さった中央財経大学と岡山大学の関係者の方々,また充実した一週間をともに過ごしくれた,江原大学と岡山大学の学生の方々に本当に感謝している。ありがとうございました。

矢野 稔晴 引率職員 学部教務学生グループ(経済学部担当)  「日中韓の交流は学生達にとって大変良い刺激となった」

 岡山大学経済学部の学生10名は,8月23日(土)から30日(土)にかけて,中国の中央財経大学経済学院に短期留学をしました。このプログラムは学生の国際的視野を広げ,近隣諸国との相互理解を高めることを目的とする日中韓三ケ国間の短期留学プログラムの一環として,2011年度から毎年行われています。今年度は日韓の学生が中国を訪れ現地で中国の学生と交流を行っていました。

 当研修に参加した一行は8月23日(土)に,中国北京市に到着後,翌24日の午後に周教員より「国民性差異に基づく日中企業文化の比較」の講義を,そして,同日の夕方から喬教員より「経済発展の背景における東アジアの伝統文化と道徳の維持」の講義を受講しました。周教員は日本への留学経験があるため,両国の経済,文化等をご自身の実体験も踏まえながら日本語で講義をしてくださり,喬教員の講義では韓国の江原大学の学生と一緒に講義を受けたため英語で行われました。

 25日(月)から29日(金)は,万里の長城,天安門,故宮,頤和園,恭王府など多くの観光地を見学しました。各見学地では,同行した中央財経大学のチューター学生や教職員より,建造物や展示品等に関しての説明を英語等で受け,中国の歴史,文化への理解を深めました。また,見学地を巡る際に三ヶ国の学生は,お互いの国や考え方について多くの意見交換を行いました。最初は,中国と韓国の学生の高い語学力に圧倒され,なかなかコミュニケーションがとれなかった岡山大学生も日を追うごとに成長が見られ,ジェスチャー等を交えながら積極的に意思の疎通を図るようになりました。8月27日(水)の午後は,学生交流会としてバレーボールおよびバスケットボールをおこない,見学地や移動中等で様々な意見を交わし,良い関係を築いてきた三ヶ国の学生たちは,スポーツを通じて,更に親睦を深めました。そして,8月30日(土)に一行は,中央財経大学の教職員ならびにチューター学生らとの別れを惜しみつつ,帰国の途につきました。

 今回の短期留学プログラムを通じて,参加した岡山大学生には,少なくとも二つの貴重な体験ができたと思います。まずは,実際の中国を知ることができたことです。それは,北京の街中を歩くことで日本にいては知ることのできない北京を見ることができたことです。昨今の中国経済の発展で北京は,裕福な人が集まっているイメージがありますが,実際には貧富の差は激しく貧しい人も多く見られました。また,本当に貧しく物乞いをしている人もいますが,自分で稼げる力があるにもかかわらず物乞いをし,そのお金で豪華な生活を送っている人がいるなど経済発展の綺麗な部分だけでなく裏側を知ることができたと思います。そして,もう一つの貴重な体験は,中韓の学生と直接話しができたことです。先にも述べたように,当初は中韓の学生の語学力の高さに会話することを躊躇していました。しかし,ジェスチャー等を交えながら自分の考えを相手に伝えるうち,三ヶ国の学生間でスムーズに意思の疎通が取れ始めました。お互いの国や歴史の関わり,現在の学生たちがお互いの国について実際どのように感じているのかなど,普段の生活では知ることのできない深い意見交換をしていました。

 中央財経大学での交流は,彼らにとって大変良い刺激となったと言えます。今回の研修を大学時代に経験できたということは,彼らの今後の大学生活,そして,その後の将来にとって,大きな価値をもたらしてくれたと感じます。今後も,このプログラムが続き,お互いの国について理解を深めた多くの学生が,三ヶ国の良好な関係を築いてくれることを心より願います。